医療用大麻の日本での解禁はいつから?デメリットや大麻取締法でどう変わる?

医療用大麻の日本での解禁はいつから?デメリットや大麻取締法でどう変わる?

世界各国で医療用大麻の活用が注目を集めており、健康に与える影響や効果についての研究が盛んに行われています。

この記事では、

  • 医療用大麻の日本での解禁はいつから?
  • 医療用大麻のメリット・デメリット
  • どのような効果があるのか

といった内容と医療用大麻がなぜ日本で解禁されるのかについて、わかりやすく解説します。

>>大麻取締法の改正について

 

医療用大麻の日本での解禁はいつから?

医療用大麻は2024年12月12日から解禁されることが決定されました。

令和6年(2024年)12月12日から施行

出典:令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます

2023年9月11日に、大麻取締法等を改正する法律の施行期日を定める政令が公布され、大麻取締法等を改正する法律は、令和6年(2024年)12月12日から施行されます。


医療用大麻が日本で解禁されることとなった流れとしては、2021年1月~6月 に「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の開催。


そのとりまとめにおいて、「大麻から製造された医薬品の施用規制の見直し」、「大麻草の部位規制からTHC等有害成分に着目した規制へ見直し」、「大麻の「使用」に対する罰則の導入」が示されました。


その後、2022年4月~9月に厚生科学審議会にて「大麻規制検討小委員会」が設置され、「大麻等の薬物対策のあり方検討会」のとりまとめを踏まえ、大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けた技術的な検討を開始。


その小委員会のとりまとめにおいて、下記改正の方向性が示されたという流れになります。


①医薬品の施用規制の見直しによる医療ニーズへの対応

②大麻使用罪の創設と有害成分(THC)に着目した成分規制の導入

③製品の適切な利用と製品中のTHC濃度規制

④大麻草の栽培及び管理の規制の見直し


医療用大麻がなぜ解禁されるようになったのか

​​従来、大麻については医療上の有用性がないと考えられており、大麻取締法では、大麻から製造された医薬品の施用等が禁止されていました。


しかし、近年、大麻草から製造された医薬品が、米国を始めとする欧米各国において承認。


また、麻薬に関する国際条約である麻薬単一条約においても、大麻に関する規制の分類が変更され、国際的にも大麻の医療上の有用性が認められたことから日本でも医療用大麻を解禁する運びとなりました。

国際整合性を図り、医療ニーズに対応する観点から、大麻単から製造された医薬品の施用等を可能とするため、大麻から製造された医薬品の施用、交付、受施用の禁止規定を削除。

大麻及びその有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)について、麻業及び向精神業取締法における麻薬の一つとして位置付けられています。

これにより、大麻草から製造された医薬品(THCを含有するもの)は、麻薬として、麻向法の免許制度の下で適正に管理、流通及び施用を可能にするという趣旨があります。

医療用大麻とは

医療用大麻とは医療現場で用いられ、健康上の目的で利用される大麻製品を指します。


多くの場合、痛みや炎症の軽減、筋肉の痙攣の抑制、食欲増進など、特定の健康問題や症状の管理に活用されています。

大麻の3つの種類

大麻は、その使用目的や形態に応じて、主に3つのカテゴリーに分けられます。


大麻の種類

特徴

嗜好用大麻

楽しみや気分転換を目的として使用される大麻。


THC含有量が高く、精神活性作用が主な特徴、「大麻」と聞いて多くの人がイメージする大麻が嗜好用大麻です。

医療用大麻

特定の疾患や症状の治療や緩和を目的とした大麻製品。


例えば、難治性てんかんの管理や化学療法による副作用の軽減などに使用されることがあります。

産業用大麻

繊維製品、油脂、建築資材、食品などの原材料として栽培・利用される大麻。


一般的に「ヘンプ」と呼ばれています。


また、医療用大麻の使用は、法的に認可された国や地域においてのみ許可されており、医師の指示のもとで提供されます。

医療用大麻の3つの種類

医療用大麻は、その形態に基づいて主に3つのグループに分類されています。


分類

詳細

概要

カンナビノイド医薬品

合成カンナビノイド製剤

天然カンナビノイド製剤

化学合成されたTHCなどが主成分

大麻草由来のCBDやTHCなどが主成分

ヘンプ由来CBD製品

(サプリメントや食品としての位置付け)

ヘンプから抽出したCBDを用いたオイルなど

大麻草由来製品

大麻草を乾燥させたハーブ製剤など

日本国内では、ヘンプ由来CBD製品の購入は可能となっており、大麻取締法の改正後も使用が可能となっています。


反対にカンナビノイド医薬品や大麻草由来製品の入手は、精神活性の効果がある(気分がはいになる)「THC」が成分として含まれているため、法律で厳しく禁止されています。


また、大麻草由来のカンナビジオール(CBD)を有効成分とする医薬品の「エピディオレックス」は、現在治験中。


カンナビノイド医薬品および天然カンナビノイド製剤に分類されますが、承認されると日本初の大麻由来医薬品となります。


厚生労働省も、エピディオレックスの国内治験は可能だとしており、報告書が2025年の3月までに、大麻由来医薬品の治験の指針となるような報告書が作成される予定です。


引用:大麻由来医薬品、国内治験の指針策定へ 厚労科研・太組研究班、3月までに報告書


医療用大麻のメリット・デメリット

医療用大麻にはそれぞれ想定されている、またはすでに示されているメリットとデメリットが存在します。

メリット

デメリット

1. 痛みの軽減

1. 依存性のリスク

2. 吐き気や嘔吐の抑制

2. 精神活性作用による副作用

3. 筋肉の痙攣の緩和

3. 長期使用の影響が不明確

4. 食欲増進

4. 法的規制による入手困難

5. 不安やうつ症状の改善

5. 薬物相互作用の可能性

6. てんかん発作の抑制

6. 品質管理の課題


医療用大麻のメリット

医療用大麻は、様々な健康上の利点を提供する可能性が期待されています。


慢性痛や神経障害性疼痛などの痛みを軽減する効果が認められており、特に従来の治療法で十分な効果が得られない患者にとって新たな選択肢となっています。


また、化学療法を受けているがん患者の吐き気や嘔吐を抑制する効果も報告されています。


多発性硬化症や脊髄損傷患者の筋肉の痙攣を和らげる効果も注目されており、患者のQOL向上に寄与する可能性があります。


さらに、HIV/AIDSやがん患者の食欲不振を改善し、栄養状態の維持に役立つことも知られています。


一部の患者では不安やうつ症状の改善効果も報告されており、精神的な健康面でも潜在的な利点があるとされています。


特に注目されているのが、難治性てんかん患者におけるてんかん発作の抑制効果です。


医療用大麻の医薬品であるエピディオレックスは、以下のてんかんに対する治療として承認されています。


  • ドラヴェ症候群:乳幼児期に発症する重度のてんかんで、多くの異なる種類の発作を伴います。
  • レノックス・ガストー症候群:早い時期に始まるてんかんで、さまざまな種類の発作が現れます。

「欧米等で使用される抗てんかん薬「エピディオレックスⓇ」を、日本でも使えるように、ドラベ症候群患者家族会、日本てんかん学会、日本小児神経学会と一緒に2018年から要望をしてきました。」


引用:日本てんかん協会

医療用大麻のデメリット

一方で、医療用大麻にはいくつかの懸念点や課題も存在します。


長期使用による身体的・心理的依存のリスクが指摘されており、特にTHC含有製品では精神活性作用による副作用(めまいや認知機能の低下など)が問題となる可能性があります。


また、長期使用の健康への影響については、まだ十分な研究データが蓄積されておらず、不確実性が残されています。


他の薬剤との相互作用により予期せぬ副作用が生じる可能性もあり、使用に際しては慎重な管理が必要です。

医療用大麻はどのような効果と使われ方をしているのか?

医療用大麻にはどのような効果があり、また使われ方をするのでしょうか。

医療用大麻の効果

日本での医療用大麻の研究は法律により、禁止されているため海外の使用事例を引用し、その効果をみていきます。


カナダの例を見ると、カナダ保健省は、2001 年に医療用大麻アクセス規則(MMAR)を定めてプログラムの運用を始め、2015 年には医療用大麻アクセス規制(ACMPR)が新設されています。


カナダ保健省による報告では、医療用大麻は以下のような使用をしています。


2020年9月現在、カナダ総人口の 1%に相当する377024 人の患者 50)が医療用大麻を利用し、睡眠改善(61%)、ストレス(51%)、慢性の痛み(50%)、うつ(38%)、急性の肉体的苦痛(28%)、頭痛/偏頭痛(26%)、筋肉のけいれん(19%)等に使われている。


引用:諸外国における医療大麻の分類と法規制の枠組みに関する研究 


また、医療用大麻はがんやうつ治療に効果があるとされ、またHIV/AIDS患者の栄養状態の維持に役立つことも知られており、カナダでは以下のような条件に基づき医療用大麻の使用を認めています。

  • 医療用大麻や研究へのアクセス
  • がん化学療法に伴う重度の難治性悪心および嘔吐
  • がん患者および HIV /エイズ患者の食欲および体重の減少
  • 多発性硬化症に関連する痛みおよび筋痙攣
  • 慢性非がん性疼痛(主に神経障害性)
  • 重度の難治性がん関連疼痛
  • 不眠症および慢性鬱病に関連するうつ状態疾患(HIV /エイズ、慢性非が性疼痛)
  • 緩和/寛解に遭遇した症状、終末期ケア環境

また、世界各国の医療用大麻の政策と実践によると、ドイツでは「てんかん、多発性硬化症、慢性疼痛または悪心などの病気のための医療用大麻製品へのアクセスおよび研究用」での医療用大麻の使用が許可されています。

世界各国における医療用大麻の使用状況

世界各国で医療用大麻が合法化されています。


地域

合法な国

特記事項

北米・中南米

アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、パナマ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ウルグアイ、パラグアイなど

アメリカは38州で合法、カナダは全土で完全合法、南米諸国は近年規制緩和が進行中

ヨーロッパ

イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、デンマーク、フィンランド、アイルランド、ルクセンブルク、マルタ、ノルウェー、ポーランド、スイス、チェコ、クロアチア、マケドニア、ギリシャなど

多くの国で厳格な管理下での使用、処方条件は国により異なる

オセアニア

オーストラリア、ニュージーランドなど

両国とも厳格な管理制度あり、特定の症状に限定

アジア

タイ、イスラエル、レバノン、韓国、マレーシア、スリランカなど

アジアでは規制が比較的厳しい、韓国は極めて限定的

アフリカ

南アフリカ、ジンバブエ、レソト、ザンビア、マラウイ、モロッコなど

主に輸出目的の生産が中心、医療制度は発展途上

各国の規制レベルは様々で、非常に厳格な管理下でのみ許可している国から、比較的緩やかな規制の国まであります。


アメリカでは連邦法では違法ですが、州レベルでの合法化が進んでおり、38州で医療用大麻が合法化されています。


また、アジアでは比較的規制が厳しく、多くの国で禁止されていますが、近年タイなどで規制緩和の動きが見られます。


厚生労働省がCBD含有の医薬品を希少病医薬品に指定

CBDを含有する医薬品「エピディオレックス」が、2024年4月26日に厚労省の専門部会で希少疾病用医薬品として指定されました。


日本で大麻草由来の医薬品が承認されるのは初めてのケースとなります。

【エピディオレックスの特徴】

  • CBD濃度:100mg/ml
  • 現在の使用地域:欧米各国
  • 主な用途:抗てんかん薬
  • 適応症:以下の3種の難治性てんかん
    1. ドラベ症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)
    2. レノックス・ガストー症候群
    3. 結節性硬化症に起因するてんかん

エピディオレックスは、てんかんの治療薬としてだけでなく、さらに広い医療効果が期待されており、将来的に使用できる症状が増える可能性も考えられています。


たとえば、この薬は「抗精神病薬」としての効果も期待されており、イギリスのオックスフォード大学が中心となって、1000人の患者を対象とした国際的な治験が現在進められています。


また、アメリカの研究グループによると、エピディオレックスには急性の歯の痛みに対して、オピオイド系薬剤と同じくらいの痛みを和らげる効果があり、CBDの効果が期待されています。


参考文献:希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器・希少疾病用再生医療等製品の指定制度の概要

CBDの効果

CBD(カンナビジオール)は、心と体に多くの健康効果をもたらすとして注目されています。

現在時点で難治性てんかんの医療用医薬品になっている他、不安やストレスの軽減、睡眠の質向上、そして抗炎症作用と痛みの軽減がその効果として知られています。


例えば、CBDの抗炎症作用と痛みの軽減効果は、多くの研究により支持されています。


CBDは体内のエンドカンナビノイドシステムに働きかけることで、炎症を抑え、痛みを和らげ、これにより、関節炎や筋肉痛などの慢性的な痛みを軽減できる効果があります。


まとめ

2024年12月12日から医療用大麻が解禁されます。


CBDを主成分とした治療薬が、難治性てんかん患者への治療薬となる他、HIV/AIDSやがん患者の食欲不振を改善し、栄養状態の維持に役立つことが期待されています。


また、不安やうつ症状の改善効果も報告され、精神的な健康面でも効果が期待されているため、これから様々な医療現場で活用されるでしょう。